老後・終の住処としての平屋|段差をなくして長く住むための工夫

コンパクト平屋・暮らし

子どもが独立し、定年が見えてくると、これから先を過ごす住まいをどうするかが現実の問題になります。今は元気でも、10年20年先には足腰が弱り、階段の上り下りひとつが負担になっていきます。そんな将来を見すえて、ワンフロアで暮らせる平屋を終の住処に選ぶ人が増えています。

とはいえ、平屋なら何もしなくても老後まで安心というわけではありません。段差や廊下の幅、寝室とトイレの位置などを、若いうちの使い勝手だけで決めてしまうと、歳を重ねてから不便が出てきます。

ここでは、老後の住まいに平屋が向く理由から、終の住処にするための間取りの工夫、平屋でも残る注意点、そして夫婦二人か一人暮らしかで変わる選び方までを順にまとめます。

平屋づくりの相談・見積もりはこちら
費用の目安や間取りの不安など、気になることをまずはお気軽に。

平屋づくりの相談

老後の住まいに平屋が向く理由

老後に平屋が効く3つの場面

老後の住まい選びで平屋が支持されるのには、はっきりした理由があります。まずは、歳を重ねてからの暮らしで平屋が効いてくる3つの場面から見ていきます。

ワンフロアで移動の負担と転倒の不安が減る

平屋が老後に向く一番の理由は、生活のすべてが同じ高さに収まることです。寝る、食べる、入浴するといった毎日の動きが1フロアで完結するため、家の中の移動で段差につまずく場面が少なくなります。高齢者の転倒事故は、外よりも住み慣れた自宅の中で多く起きています。 上下の移動がない平屋は、その転倒のきっかけそのものを減らせます。

足腰が弱っても、洗濯物やゴミを持って階をまたぐ必要がなく、水平の移動だけで用が足ります。将来車いすや歩行器を使うことになっても、暮らし方を大きく変えずに住み続けられるでしょう。今の元気を基準にせず、動きにくくなった先の自分を思い浮かべて考えてみてください。

階段の上り下りから解放される

2階建てで老後に負担となる筆頭が、階段の上り下りです。膝や腰を痛めると、1日に何度も上り下りする階段が大きな苦痛になります。実際、体が弱ってから2階へ上がらなくなり、上階がまるごと物置になってしまう家は少なくありません。せっかくの部屋が使われず、掃除の手間だけが残ることになります。

平屋は階段そのものがないため、昇降機の設置や間取りの作り替えといった老後のリフォームを心配せずにすみます。夜中にトイレへ立つときも、同じ高さを歩くだけで、暗がりでの転落の危険がありません。階段のない暮らしは、歳を重ねるほど安心につながっていくものです。

掃除と家の管理が1フロアで完結する

平屋は、掃除や家の手入れが1フロアで完結する住まいです。掃除機や道具を階ごとに持ち運ぶ必要がなく、家事の動線が短くまとまります。使わない2階を維持したり掃除したりする手間が、そもそも生まれません。歳を取ってからの家事は、この積み重ねの差が大きく効いてきます。

屋根や外壁の点検も、建物の高さが低いぶん足場や高所作業の費用を抑えやすくなります。長く住むほど発生するメンテナンスの負担が軽いのは、終の住処として見のがせない利点でしょう。日々の掃除から将来の修繕まで、管理のしやすさで住まいを選ぶ視点を持ってください。

終の住処にするための間取りの工夫

終の住処は着工前に仕込む

平屋はバリアフリーにしやすい住まいですが、何もせずに終の住処になるわけではありません。ここでは、長く住むために着工前へ仕込んでおきたい間取りの工夫を挙げます。

廊下と開口部は車いすが通る幅で確保する

終の住処にするなら、廊下と開口部の幅を車いすが通れる寸法で確保しておきます。今は自分の足で歩けても、10年先に車いすや歩行器が必要になる可能性は誰にでもあります。そのとき廊下や扉が狭いと、家の中を移動できず、住み慣れた家での暮らしが一気に不便になるものです。幅を広げるにはあとから壁を壊すことになり、費用も工事も大がかりになります。

だからこそ、幅は建物の骨組みを決める着工前の図面段階で押さえておく必要があります。歩けるうちは広すぎると感じても、将来を思えばむだにはなりません。下の寸法を目安に、廊下と各扉の有効幅を図面で一つずつ確認してください。

部位 車いす対応の目安幅
廊下 有効85cm以上(できれば90cm)
開口部の扉 有効80cm以上
トイレの出入り口 有効75cm以上

寝室のそばにトイレを配置する

老後の暮らしやすさを左右するのが、寝室とトイレの位置関係です。歳を重ねると夜間にトイレへ立つ回数が増え、寝室からトイレまでの距離がそのまま毎晩の負担になります。遠いうえに途中で段差や廊下を挟むと、暗がりでの転倒につながりかねません。寝室のとなり、あるいはすぐ近くにトイレを置くだけで、夜の移動は驚くほど楽になります。

将来、介助が必要になったときも、寝室とトイレが近いほうが世話をする側の負担も軽くなります。間取りを決めるときは、昼の使い勝手だけでなく、夜中に眠い頭で歩く場面を思い浮かべてください。動線が短いほど、長く安心して住み続けられるものです。

手すりの下地を壁に先に入れておく

手すりは必要になってから付けるものですが、下地だけは先に仕込んでおきます。手すりは壁の内側に補強となる下地がないと、体重をかけたときに外れてしまい役に立ちません。ところが下地は、壁ができてしまうとあとから入れるのが難しく、壁を壊す工事になってしまいます。工事中に入れておけば安く確実なのに、あとからでは何倍もの手間がかかります。

廊下やトイレ、浴室、玄関など、将来手すりが要りそうな場所に、下地だけを先に入れておくのが定番の備えです。今は付けず、下地だけ仕込む のが、終の住処づくりの合言葉といえます。必要になったその日にすぐ付けられるよう、場所を工務店と相談して決めておいてください。

床の段差と敷居をなくしてフラットにする

終の住処では、床の段差と敷居をなくしてフラットにしておきます。平屋は上下移動こそないものの、玄関の上がり框や浴室の敷居、部屋境の敷居といった小さな段差は残りがちです。数センチの段差でも、すり足になった足には十分つまずきの原因になります。床の高さをそろえ、敷居はフラットなレールや埋め込みにして、家の中から段差を消しておきましょう。

とくに浴室の出入りは水で滑りやすく、事故の起きやすい場所です。段差の解消と手すりの下地をセットで考えておくと、あとで慌てずにすみます。バリアフリーは住み始めてから直すより、建てるときに仕込むほうが安く、仕上がりも確実です。

POINT

老後の間取りは、今の元気ではなく将来の体を基準に決める。幅・配置・下地・段差は、着工前にしか安く仕込めない。

老後の平屋で見落としやすい注意点

平屋でも残る老後の弱点

平屋は老後に向く一方で、平屋だからこそ残る弱点もあります。ここでは、終の住処にする前に知っておきたい3つの注意点を挙げます。

窓と戸が地上に集まり防犯の備えが要る

平屋は、すべての窓と出入り口が地上階に集まる住まいです。2階建てなら上階の窓は手が届きにくいですが、平屋は侵入の経路が地面にまとまります。高齢者だけの世帯は狙われやすく、生活の様子から留守もわかりやすいため、防犯の備えは欠かせません。窓の多い開放的な平屋ほど、対策なしでは不安が残ります。

人感センサー付きの照明やシャッター、面格子、砂利敷きなどを組み合わせ、入りにくく気づかれやすい家にしておきましょう。老後を安心して過ごすためにも、間取りと同時に防犯も決めておいてください。平屋の防犯の具体策は、こちらで詳しくまとめています。

平屋の防犯対策|窓と出入り口を固めて侵入を防ぐ
平屋は窓も玄関も勝手口もすべて地上にそろうため、2階建てと違う防犯の弱点を抱えます。この記事では平屋の防犯リスクがどこにあるかを示し、窓の位置・防犯ガラス・シャッター・補助錠・センサー照明・砂利・塀まで、侵入を防ぐ具体策をまとめました。これから平屋を建てるあなたが、侵入されにくい家を計画する参考にしてください。

冬の温度差でヒートショックの危険が高まる

老後の平屋で見落としがちなのが、冬場の家の中の温度差です。平屋は横に広がるぶん、居室から離れた廊下や脱衣所、トイレが冷え込みやすくなります。暖かい部屋と寒い水回りを行き来すると、血圧が急に上下してヒートショックを起こしかねません。ヒートショックは高齢者の入浴中の事故で特に多く、命にかかわることもあります。

断熱をしっかり入れる、脱衣所に暖房を置く、家全体の温度差を小さくする空調を選ぶ、といった対策で危険は下げられます。老後を見すえるなら、見た目や間取り以上に、家の中の温度差を小さくする工夫を優先してください。

注意

冬の脱衣所やトイレの冷えは命にかかわる。断熱と暖房で、部屋ごとの温度差を必ず小さくしておく。

広い土地が必要で土地代と手入れがかさむ

平屋は部屋を横に並べるため、同じ部屋数でも広い土地が必要になります。広い敷地はそのぶん土地代が高くなり、建物で抑えたはずの予算が土地で膨らむことも珍しくありません。さらに、庭や建物の外周が広いほど、草むしりや外構の手入れといった管理の手間も増えていきます。老後は、この外まわりの世話が体力的にこたえるようになります。

手入れの少ない外構を選ぶ、敷地をコンパクトにまとめる、といった工夫で管理の負担を先に減らしておくと安心です。土地は広ければよいわけではなく、歳を取ってから自分で世話できる広さかどうかで選んでください。長く住むほど、手のかからなさが効いてくるものです。

世帯に合わせた平屋の選び方

世帯で変わる平屋の選び方

老後に向く平屋の形は、夫婦二人か一人暮らしかで変わってきます。ここでは、世帯に合わせて広さと間取りをどう決めるかを見ていきます。

夫婦二人ならコンパクトな平屋で十分暮らせる

子どもが独立したあとの夫婦二人によく合うのは、コンパクトな平屋です。子育て期に建てた広い家は、二人だけの暮らしには持て余しがちで、使わない部屋の掃除や冷暖房の費用だけが残ります。寝室にもう一室を足したくらいの小さな平屋なら、掃除も光熱費も軽くすみ、生活の動線も短くまとまります。夫婦のどちらかが動きにくくなっても、目が届きやすく声もかけやすいのが小さな平屋の安心です。

部屋数の多さより、二人が毎日心地よく過ごせる暮らしやすさを基準に広さを決めてください。老後の平屋は、広さより動線の短さで選ぶほうが暮らしは楽になります。 小さな平屋という選び方については、こちらで詳しくまとめています。

小さな平屋という選択|広さの目安と向いている世帯
小さな平屋に興味はあるものの、狭さや広さの目安で迷っている方に向けた記事です。小さな平屋が選ばれる理由から、広さの目安、向いている世帯、暮らし方までをまとめました。夫婦二人や老後、一人暮らしの住まいを考える手がかりとしてお使いください。

一人暮らしは管理のしやすさで選ぶ

単身で老後を迎えるなら、管理の手間の少なさを最優先に選びます。一人で暮らす家は、掃除も戸締まりも設備の管理も、すべて自分ひとりでこなすことになります。ワンフロアで家全体を見渡せる平屋なら、掃除機がけも施錠の確認も一度の動きで済み、日々の手間がたまりません。部屋を無理に増やさず、寝室と居間、水回りだけに絞るほど、暮らしの世話は軽くなります。

広さや部屋数にこだわるより、自分ひとりで無理なく管理できる規模かどうかを基準にしてください。年齢を重ねてから持て余さないよう、必要な部屋だけに絞るのが単身の平屋のこつです。平屋が自分の暮らしに向いているかどうかは、こちらで確かめられます。

平屋に向いている人・向いていない人
平屋に向いている人と向いていない人を、敷地・家族構成・予算・暮らし方の観点から具体的な人物像で示します。広い土地や老後の暮らし、家事動線など向いている人の特徴から、狭小地や大家族など向かない条件までをまとめました。平屋が自分に合うかを見極める判断の手がかりとしてお使いください。

まとめ

老後の住まいに平屋が向くのは、ワンフロアで移動や転倒の不安が減り、階段の負担がなく、掃除や管理も1階で完結するからです。ただし、平屋なら自動で安心というわけではありません。終の住処にするなら、廊下と開口部の幅を車いすが通る寸法で取り、寝室のそばにトイレを置き、手すりの下地を先に仕込み、床の段差をなくしておく必要があります。これらは着工前の図面でしか安く決められません。あわせて、地上に窓が集まる平屋の防犯、冬の温度差によるヒートショック、広い土地の手入れといった残る注意点にも先に手を打っておきましょう。夫婦二人か一人暮らしかで必要な広さは変わります。今の元気ではなく将来の体を基準に、長く安心して暮らせる平屋を選んでください。

平屋づくりの相談・見積もりはこちら
費用の目安や間取りの不安など、気になることをまずはお気軽に。

平屋づくりの相談

あわせて読みたい関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました